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チキン・ショックの真の影響とは?


先日7月20日に中国メディアが報じた上海福喜製のチキンナゲットに期限切れの鶏肉が使われていた問題はみなさんも記憶に新しいのではないでしょうか?

「(上海福喜食品に)だまされた。私どもの責任として、お客様に品質の高い安全な食品をお届けしたい。そのための品質保証の見直しを進め、追加策も講じている」――。

日本マクドナルド社長カサノバ氏の記者会見の一部です。マクドナルドは冒頭に述べたようにサプライヤーの一部が期限切れの鶏肉を使っていたため、大きな問題となってしまいました。不調が続くマクドナルドにおいては非常に厳しい問題ではないでしょうか?ぼくは7年間マクドナルドでアルバイトをしていたこともあり、いまでもマクドナルド関係者の方ともよくお話しさせていただきますが、いくつかの記事でまとめられているように、現場の感覚としても顧客離れは凄まじいみたいです。現場社員の声を聞く限りでは、「2013年から続く不調にとどめを刺した」と感じているスタッフもいました。

<参考記事>

http://toyokeizai.net/articles/-/44008

http://toyokeizai.net/articles/-/43965

そこで今日はこのマクドナルドの「チキン・ショック」についてぼくが考えることを述べてみたいと思います。大きくは下記2つ。

カサノバ社長が「だまされた」と被害者の立場となるような発言をした点

今後マクドナルドがチキン・ショックからリカバリーを行う際の注意点

上記の点について言及していきたいと思います。あくまでもぼく個人の「意見」ですので、ほとんどの内容が仮説がとなっていることはご了承ください。リサーチャーらしからぬ記事となっています。

カサノバ社長が「だまされた」と発言した理由は?

みなさんはどう思われるでしょうか?確かにマクドナルドは被害者ですよね・・少なくともサプライヤーをコントロールできなかったという点はマクドナルドに落ち度があったわけですが。ただ、謝罪会見においてこのような発言はなかなか強気だと思いました。以前もマクドナルドは賞味期限切れ事件を起こしており(確か2007年です)、その際はフランチャイズ店においてサラダなどの賞味期限を改ざんして販売したという問題でした。この時、指揮していたのはいま何かと話題となっている原田氏でした。原田氏は当時のインタビューにて下記のように応えています。

※日経ビジネス2011年8月1日号の「経営教室」
賞味期限シールを貼り替えたのは、フランチャイズ加盟店のうち1社のみでした。日本マクドナルドが会社ぐるみ、組織ぐるみで命じたものではなかった。それを確信すると、僕は社内でこう伝えました。「二度と同様の出来事が起こらないように徹底して体制を改める。ただし、卑屈になる必要はない。反省すべきはして、あとは堂々としていればいい」謝罪会見では、落ち着いた青系のネクタイを締めた役員一同が、ずらりと並んで頭を下げる。それがリスクマネジメントのセオリーです。でも、そうしなかった。浮足立って、不安になっている社員やクルーたちをますます不安にさせるだけだと思ったので

原田氏は勝負時には赤いネクタイをすると言われています。(余談ですが現在のベネッセの会見は青いネクタイだったそうです。)つまり、何が言いたいかというと、以前にあった会見では上記のような意図があり、謝罪をしつつも卑屈にはならないためセオリーの謝罪会見とは違う方法を行ったということです。これと比較しつつ今回のカサノバ氏をみるといかがでしょうか?当時よりも更に「マクドナルドは関係ない」と伝えているように聞こえてきます。もちろん、以前はフランチャイジーの過ちで、今回はサプライヤーの過ちなので、距離感という点においては今回の方がマクドナルドが直接ガバナンスを効かせる範囲ではないと言えます。ただ、犯した過ちの範囲においては以前はフランチャイズ店舗4店舗(ソースを忘れましたが確かあっています。)でしたが、今回はそれにとどまる店舗数ではないのは明らかです。それを考慮した場合、やはり「マクドナルドは関係ない」というスタンスで挑むことにやや疑問が残ります。(ぼくはリスクマネジメントの専門ではないのでこの辺は感覚で書いています。)この疑問をぼくなりの角度から考えてみました。

少し話しはそれますが、カサノバ氏について少し触れてみたいと思います。カサノバ氏は1991年にマクドナルドカナダに入社しマクドナルド人生が始まったみたいです。その後、1997年にマクドナルド ロシア・ウクライナのマーケティングシニアディレクターに就任、2001年にマクドナルド カナダのマーケティング シニアディレクターに就任したそうです。そして、2004年に日本マクドナルドにて上席執行役員・事業推進本部長に就任し、ぼくは今でもいろいろと思いで深いものがありますが、「えびフィレオ」、「メガマック」、「クォーターパウンダー」のマーケティングを担当されたそうです。日本では2009年まで在籍され、その後マクドナルド マレーシアのマネージングディレクター、マクドナルド マレーシア・シンガポールのリージョナルマネージャーに就任(マクドナルド マレーシアのマネージングディレクターを兼任)し、2013年に再び日本マクドナルドに戻ってきて、CEOとして就任されたという経歴です。今は事業会社の日本マクドナルド以外でもホールディングスの代表取締役社長兼CEOも務めているそうです。経歴を追ってみましたが、長い間マーケティング畑にいた人ということがわかります。そのキャリアから、日本市場でもマーケティング手腕を期待されジャパンのCEOになったわけですが、それ以上に注目すべき点は「ワールド」で活躍されている人材ということです。ここでぼくが言いたいことはカサノバ氏がマーケティング出身だからリスクマネジメントが苦手じゃないのか(それもあるかもしれませんが)という点ではなく、ワールドに近い立場の人材、つまり、各国のフランチャイザーにあたるアメリカ本社の「マクドナルド」とも交流が深い人材ということです。マクドナルドはサブフランチャイズ方式という経営を行っており、アメリカ本社がヘッドにいて、その下に各国のマクドナルドがフランチャイズ契約を行っています。さらに各国のマクドナルドはその下にフランチャイズ加盟店を集めて、再譲渡をしているという仕組みです。なので、日本マクドナルドもフランチャイズフィーとしてアメリカ本社に支払を行っているのです。この方式を説明すると仮説が膨らむと思いますが、日本マクドナルドのオフィススタッフに話を聞くこともありましたが、かなりアメリカ本社の圧力は強い構造になっているみたいです。今まで原田氏はその圧力を「結果」という武器をもとに取っ払い、日本市場における経営を推進されていたそうです。

だいぶ話がそれてしまいましたが、もう一つカサノバ氏が日本のCEOになったことで注目する点があります。それは日本マクドナルド初の外人CEOということです。今までの日本マクドナルドは創業者の藤田氏→2代目社長(名前を失念しました。)→原田氏と全員日本人でした。何が言いたいかというと、いずれのCEOもワールドのマクドナルドとは接点がない人たちです。このあたりで少し話をまとめます。

・カサノバ氏はワールドに近い立場の人材=アメリカ本社の「マクドナルド」とも交流が深い人材

・日本マクドナルドにおいてカサノバ氏以前のCEOはいずれも日本人=アメリカ本社の「マクドナルド」と交流が薄い人材

つまり、日本マクドナルドの現状は今までで一番アメリカ本社の「マクドナルド」の影響を受けやすい状況と考えられます。

その上で話を戻してみましょう。今回の記者会見、おそらくかなり高い確率でアメリカ本社の意向が入っている内容だと考えられます。例えばこのような仮説は考えられないでしょうか?仮に今回の記者会見にて日本マクドナルドが「だまされた」というように被害者の立場という示唆を含まない発言をしたとします。つまり、マクドナルドのガバナンス力が問題という内容です。その場合、もちろんサプライヤーへの被は薄れるわけですから、当然マクドナルドが標的になります。日本マクドナルドが利用しているサプライヤーは世界各地の企業です。もちろん、それぞれのサプライヤーは日本マクドナルド以外にも供給を行っています。仮にマクドナルドが「上海福喜食品」を加害者と発言しなければ、中国の他のサプライヤーはもちろん、その他各国のサプライヤーも使用しづらくなると考えられます。日本マクドナルドだけを考えれば、数か国のサプライヤーが使用できなくなっても影響範囲が大きくなりませんが、ワールドのマクドナルドではサプライチェーンとして致命的な影響を与えることになります。それを防ぐために、日本マーケットにおける謝罪(日本人が好むような謝罪)よりも、ワールド全体でのリスクマネジメントを行ったのではないでしょうか?今回の件についてはロジックにかなりの飛躍があることは承知ですが、原田体制のラストからカサノバ体制の現在において「アメリカの圧力」というものが裏では非常に強く動いている気がしています。先ほども述べましたが、原田氏は「結果」で圧力を回避していたと聞いていますが、その「結果」が不調になったタイミングから日本マーケットを指揮していたのが日本を知らない決定者たちだとしたら、現在の多くの施策は日本マーケットを的確にとらえていないものになります。これが現在の「不調」を起こしている最大の原因だと考えることは過言ではない気がしています。

今後マクドナルドがチキン・ショックからリカバリーを行う際の注意点

ここからは今後の話を考えていきましょう。ちなみに、ここから使う「マクドナルド」は「日本マクドナルド」を指します。まず、今回の問題で顕著に考えられることは「客離れ」ですよね。実際に7月の財務内容をみると、売上の低下、特に客数の減少がはっきりとみえています。まー、ニュースであのような映像が流されれば、食べたいとは思わないですよね。(ぼくは7年間マックを食べ続けていたのですでに中毒性が非常に高く食べてしまいましたが。笑)つまり、マクドナルドがまず行うことは「客数の回復=信頼の回復」です。しかし、冒頭の参考記事でも出ていますがマクドナルドは「損失規模を見込めない」と発表しているように、回復まではどのくらいかかるのか不透明かつ、1年以内というような短期的な内容でもないと考えられます。何が言いたいのかというと、「数年は売上が回復しない可能性が高い」と言うことです。そりゃそうだと思われるかもしれませんが、この仮説を前提に次なる影響を考えることが今回一番重要なことだと思います。以前のブログで言及したことがありますが、マクドナルドのPLにおいて一番圧迫する科目は「アルバイトの人件費」です。その際のブログでも伝えていますが、人件費を削減すると店舗力(=QSC)が低下します。ぼくの感覚としても人件費とQSCは正の相関関係にあると思います。しかし、人件費を投下しすぎると、QSC増加の伸び率が極端に上がりづらくなる箇所が発生します。この点をバランスよくコントロールするのが重要なのですが。また、話がそれてしまいましたが、売上が上がらない場合に真っ先にコントロールが入るところが人件費ということです。現状すでに人件費のカットは始まっていると思われます。カットといっても辞めてもらうわけではなく、シフトから外されるということですが。この状態が継続されるとした場合に考えられる仮説は「アルバイトの退職」です。おそらくシフトに入ることが極端に減るアルバイトはマクドナルドを辞める可能性は高いでしょう。近年のマクドナルドのリクルート状況は非常に厳しいという話も聞いていますが、このタイミングで人というリソースは確実に減ります。つまり「アルバイト離れ」です。ぼくはこの「アルバイト離れ」がさらにマクドナルドの不調を加速すると考えています。これによりまず起こることは先ほども説明したQSC低下です。本来いるべき人数が店舗にいなくなります。そのため、商品の質は落ち、スピードも遅くなり、客席は汚い、そのような状態になります。せっかく足を運んだお店の状態がそのような状態だったら、、、リピート来店は考えないですよね?つまり、負のスパイラルに入り、客数の回復=信頼の回復は実現されないです。ではどうすればいいのか?アルバイトを辞めさせない施策を行うことです。それが粗利率の見直しなのか、別のプログラムを設けるかはここでは判断できませんが、顧客離れ以上にケアしなければいけないことは「アルバイト離れ」だとぼくは考えています、繰り返しになりますが、アルバイトがいなくなれば顧客離れはさらに加速することは容易に考えられるからです。

まとめ

長くなりましたが今回の要点をまとめます。

<前半>
・カサノバ体制になったことで「アメリカ本社の圧力」が増加している可能性が高い

・日本マクドナルドの不調の要因は「アメリカの圧力」が強すぎて、日本マーケットでのローカライズが正しくできていない

<後半>
・チキン・ショック問題における真の影響は「顧客離れ」ではなく「アルバイト離れ」が起こる可能性が高まること

・「アルバイト離れ」が加速すると、「客数の回復=信頼の回復」を行うことは困難であり、むしろ状況が悪化することも考えらえる

・いまの日本マクドナルドが一番ケアしなければいけないのは「店舗スタッフ」のES

いかがでしょうか?7年間現場にいたときに感じた定性情報がソースとなっている箇所が多いので、ロジックの飛躍箇所は多いと思いますが(リサーチャーの文章とは思えないですよね。笑)、方向性としては間違っていないと感じています。いまメディアで流されている記事とはかなり角度の違う仮説を持っていると思いますが、特に<前半>の内容はグローカル(グローバル企業のローカライズ)という視点ではかつてない境地に立たされていると感じています。今後のマクドナルドがどのように日本マーケットをとらえていくのか?そして、店舗スタッフのESをどこまでとどめることができるのか?という点は継続して注目していきたいと思います。ちなみに、マクドナルドの理念にはこのような内容があります。

マクドナルドはピープルビジネスです。マクドナルドは「グローバルで活躍できる人材を育てるエクセレントカンパニー」を目指しています。

ピープルビジネスの真価がいま問われる時なのではないでしょうか?