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ソーシャルインパクトを与える方法は新しい何かを生み出すだけではない


恒例となった(勝手にシリーズ物だと思っています。笑)、立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科が主催する「ソーシャルデザイン集中講座 2014」のサマライズです。講座参加の経緯などは前回のブログから。早速ですが第3回の講義をサマライズしていきます!

 

第3回 経営組織戦略とソーシャルデザイン 講師:坂本 文武氏

概要:現代の経営組織および事業の戦略はなぜ「ソーシャル」に注目するのか?戦略的CSR・CSV・CRM・BOPビジネスなど組織人が気になりながらも整理しきれていないことが多い関連キーワードに触れつつ「ソーシャル」がもつ意味を考えます。

今回は全体のストーリーには触れずにぼくが気になった各トピックだけご紹介します。ちなみに全体を触り程度に説明しますと、坂本氏の専門は「組織論」ということなので、そもそも組織とは何か?企業とは何か?NPO法人とは何か?というテーマが大枠となっています。その上で、組織は「ソーシャル」に注目する意味はあるのか?それはなぜか?という議論が進みました。正解がはっきりとしていない領域だからこそ、受講生とともにディスカッションにて進めていく講座でした。非常に考えさせられるテーマが多い印象です。では各トピックに移ります!

坂本氏が考える社会デザインとは?

まだ、研究としては期間の浅い社会デザインでは研究者によって定義も様々みたいです。今回は坂本氏が考える社会デザインの紹介がありました。坂本氏は社会デザインを「関係性の再構築」と表現していました。ある事象に対して、様々な学問を複合的にみて、経営学からみたら・・・社会学からみたら・・・●●学からみたら・・・というように横断的に事象をとらえて、その事象の関係性を新たに組み替えていくといいます。前々回の講師中村氏の定義との共通点は「異質の統合」という点でしょうか。やはり、ぼくが知っている限り一番「イノベーション」という言葉が当てはまる領域だと感じました。ちなみに、坂本氏の場合は「社会」の定義を福沢諭吉から引用しており、「人間交際」という意味で使っていました。社会=人間交際、たしかにしっくりくる気がします。社会人=人間交際人と表現すると、様々な利害関係や折衝からなる空間において、関係性を築いていく人というのが社会人と定義できるかもしれません。

企業の目的は?

こう問われると実は答えづらい内容ではないでしょうか?このテーマについてもグループディスカッションを行ったのですが、全員社会人でしたがぼくを含めて自信を持った回答ができる人はいませんでした。「よりよい社会の実現」や「利益の追求」などの発言が多かった印象です。もちろん、回答が一つではないので様々な見方があってもいいということですが、今回は組織論としての回答を記します。組織論では企業の目的、もしくは企業活動の目的を「付加価値の提供」と表現していました。企業、企業活動は「Thru-Put=価値変換装置」という役割となっているということです。どう意味か解説すると、企業そのものは「資源がない」状態というのが前提です。人や金などのいわゆる経営資源は「社会から借り受けている」というのがここでのポイントです。たしかに、ぼくら労働者もだれのものか?と聞かれたら会社のものです。と答える人は少ないですよね。なので、企業は社会から地域資源や環境資源を借り受け、企業活動にてそのリソースを活用することで新たな価値(=付加価値)を生み出し、社会に還元する役割となるみたいです。要は、金を借りたら利子をつけて返すのと一緒の概念です。しかし、実際には価値変換に失敗することもあり、付加価値ではなく負荷価値を生み出すこともあります。例えば環境負荷とか。いずれにしても、企業が「社会資源の借入→企業活動→社会へ付加価値を還元」という価値変換装置になっていることは納得がいきました。先日起業をしたのですが、そもそも企業とは?っていうのは考えていなかったですが、ビジョンやミッションは相当の時間をかけました。FIXするのに4か月ぐらいかかったのかな。そこで考えたビジョンはすなわち付加価値にあたるものだと理解しました。なお、この付加価値を最大化するためには3つのポイントがあるそうです。

・目的

・分業

・調整

目的はいわゆるビジョンなどにあたるもので、付加価値の方向性です。これがないと活動の方向性を見失います。そして、「目的」を達成するために行うことが「分業」。専門性をあげて、効率化を行うということです。しかし、この分業には効率化の裏に出てくる弱点があります。みなさんも経験があると思いますが、強いセクショナリズムは全体最適にはなりません。隣の部署と協業するのも一苦労です。会議が多くなり、部門間の連携は薄れていきますよね?本当会議多くなりますよね?(笑)これ意味あるのかって会議が。(笑)そういった弱点はダークサイドと呼ばれ、「集団圧力」「集団浅慮」「集団凝縮性」という内容が発生しているそうです。そして、このダークサイドは組織として動いている以上逃れられないといいます。そのため、最後に重要な点はダークサイドを「予防」または「最小化」するための「調整」です。まとめると、目的を定めて、その目的を達成するために分業を行い、そこで発生するダークサイドを予防もしくは最小化する調整を常に行うことが付加価値を最大化するポイントとなります。組織論ではこの「調整」を研究しているそうです。なお、組織論では一つの結論があるそうです。それは組織規模は小さい方が良いということ。組織規模が大きいことのメリットは「規模の経済」しかないそうです。そして、その規模の経済は大きい組織で生まれるダークサイドと比較した場合にダークサイドの方が上回ることが多いそうです。結果、規模は小さい方が組織としてはいいというロジックです。あくまで研究領域の話ですが、小さな組織がネットワーク化され、様々な付加価値の統合を行う方が理想的だと考えられます。

ガバナンスの比較。企業とNPOはどちらがガバナンスがきくのか?

また、興味深いテーマだと思いませんか?恥ずかしながらぼくは考えたこともなかったです。そもそも、企業は委員会等設置会社の場合は「株主総会→取締役会→執行委員会」という構図になります。株主が取締役を選任して、取締役が執行役を指名する流れです。なので、最高意思決定者は「株主」となります。このあたりで会社はだれのものか?という議論もあり、なかなか興味深い議論だったのですが、今回は割愛します。少しだけ記載すると、株主って会社をそこまで自分のものとして考えているか?という点が論点でした。オーナー意識が低いと。ちなみにそこから選任されている取締役や執行役も自分たちのものと考えている意識は低いのではないか?という議論でした。それを踏まえつつ、NPO法人の構図を確認してみましょう。NPO法人の場合は「会員総会→理事会→事務局」となっています。会費を払っている会員が理事を選任し、理事が事務局を指名する流れです。なので、最高意思決定者は「会員」となります。こう説明すると組織構図に違いはないんですよね。違うのは「営利目的」か「非営利目的」という点。ただ、非営利目的というのは利益の再配分を禁止されているだけです。つまり、株主が受け取る株式配当金やキャピタルゲイン、従業員が受け取る決算賞与などがNPO法人ではないということです。それ以外では基本的に組織上の違いはありません。(細かいところはもちろんあります。)ただ、NPO法人には「寄付者」や「ボランティア」といった特定の組織に無償で協力する「愛」があるリソースが集まるのが特徴でしょう。この違いは大きいですよね。ここではなぜ集まるかは深堀しませんが、NPO法人にはそのような無償でも頑張ってくれる「愛」があります。理想に向かって「愛」で頑張るのです。つまり、「経済非合理性でつながっている組織」といえます。一方、企業は再配当を求めて出資しているオーナーが最高意思決定者ですから「経済合理性でつながっている組織」といえます。そう、つまり論点は「金」か「愛」、どちらがガバナンスがきくかという点です。これも正解はありませんし、極論の議論です。ガバナンスを先ほどの企業の役割と照らし合わせて、「目的を達成するための統治」と定義した場合、どう思われるでしょうか?実際の講義では様々な意見が出ましたが、ぼくはこのように考えました。

・仮に目的に向かう「愛」の疎通がとれていた場合はNPO法人の方が統治された組織だと思います。一つの方向にみんなで頑張ろうぜ!という雰囲気です。「金」以外の気持ちにモチベーションがあり、切磋琢磨するのです。素晴らしい組織ですよね。ただ、その「愛」の疎通が崩れたときはどうなるでしょうか?何が彼らを「目的」に軌道修正できるのでしょうか?ぼくはそこに軌道修正できる力はないと思います。一方、企業は「金」という力で軌道修正を行います。生活に直結する「金」による抑制です。結論、調子がいいときはNPO法人の方が統治されている組織だが、調子が悪くなった場合に統治ができるのは企業。よって、確率的に目的を達成するためにリスクが少ない組織は「企業」ということになり、「企業」の方がガバナンスがきくと思います。

あくまでぼくのロジックなので正解でもないですし、反論もあると思いますが、今回重要なのはNPO法人をこのような角度から思考することだと思います。組織という観点からNPO法人を考えることでぼくらがかかわれる範囲も広がる可能性があるということです。このような横断的な発想が社会デザインなのかもしれません。

企業は継続する意味はあるのか?利益を出す意味はあるのか?

難しいですよね。少なくともぼくは考えたこともなかったです。NPO法人は先ほども説明しましたが、非営利組織なので、売上と経費を0に近づける、「トントン経営」を行います。一方、企業は再配分もあるので「利益追求の経営」を行います。と説明されたら”そうだよな”と思いますよね。ただ、一度考えてみましょう。PL(損益計算書)を思い浮かべてみると、上から売上、次に製造原価、次に・・・と売上以降は経費になっていると思いますが、これは利益折衝の流れとなっています。売上は生活者と利益交渉し、製造原価はサプライヤー、給与は従業員、税金は国、株式配当は株主・・・、「利益」はいわゆるボトムと呼ばれる最後の項目にあたり、この時点で余っているお金はすべてのステークホルダーと利益折衝が終わっているお金となります。不思議ではないですか?「再配当があるから利益を出す」というロジックは破たんするんでよね。ではなんで企業はNPO法人と違い「利益追求」を目指すのか?雇用でもなければ投資でもないし。ちなみに、利益がないと投資できないというロジックもありえないですよね。借入もあるし、NPO法人であればファンドレイザーが資金を集めます。では何か?今のところ学術的に言われているのは「リスクヘッジ」だけだそうです。つまり、「何かあった時のための貯え」ということです。今回何度も使いますがこれも正解があるわけではないですが、このようにいつも何も感じていない論点でも考えてみると矛盾だらけのことがあります。このような視点を持つことが大事だということです。ちなみに、継続する意味ですが、NPO法人では「目的」を達成した場合「解散」する組織もあるみたいです。企業は当初掲げたビジョンを達成しても「解散」するという話は聞いたことがないですよね。雇用を守るといっても、NPO法人は解散時には転職支援もするそうですし。。。起業もしたので自分なりの「解」を用意しておこうと思いました。なお、先ほど説明したようにNPO法人は利益を出すことを目的としないため、「●●(=目的)を達成するためには●●円必要だから集める」という発想があります。企業はそのような予算管理はしないですよね。損益分岐点をもとに考えるか、売上予測をもとに考えるかだと思います。そのため、組織風土の違いが表れてきます。

・NPO法人:外部化思考
⇒自分たちが大きくなるのではなく、外部とのネットワークを活用して、規模の経済と同様の効果を生み出す

・企業:内製化思考
⇒利益追求を目指し、自分たちのコストを圧縮するために内製化を進める

一概にすべての組織に当てはまるわけではないですが、なんとなく今までの話を聞いていると納得しました。冒頭の社会デザインの話に戻りますが、横断的に事象をみることや、異質の統合を行うなどの言葉との相性はNPO法人の方が良いのかなと思いました。ちなみに、起業した会社では外部ネットワークとの統合をビジョンの一部でうたっています。実際のNPO法人はプロダクトアウト思考が強く、内向きな姿勢もあるかもしれませんが、行っている行動自体は外部との連携というのは事実だと思います。ぼくらもこのあたりの意識をつついてあげることで協業がスムーズになるのかもしれません。

まとめ

最後に坂本氏が考えるソーシャルデザインについて改めて説明します。今回の講義は全体的に正解がないことを議論するものでしたが、坂本氏はソーシャルビジネスだ!と諸突猛進するのは違うと言います。それは冒頭にあった企業活動の目的は社会に付加価値を与えることだからだそうです。つまり、すでにソーシャルビジネスなのです。その企業が組織論でいうダークサイドで苦しみ、適切な方向性を向いていないのであれば、彼はそれを解消することが一番ソーシャルインパクトがあることなのではないかと述べていました。実際に彼は企業のCSRコンサルと称して、組織文化の改善などを仕事としていた時期もあったそうです。結果は残念だったそうですが。。ぼくは今まで大きなソーシャルインパクトを与えるためには「仕組み」が必要だと思っていました。今までにない「仕組み」や「装置」を作ることで「構造を変革」することが一番世の中が変化するのだと。ただ、坂本氏の考え方は違います。今あるリソースを見直すことで社会を変えるという視点です。「生み出す」だけではなく、「組み替える」という視点。ソーシャルデザインというものの本質が感じられた気がしました。改めてこの領域で自分ができること考え直していきたいと思います。