8万人の雇用が失われるという可能性


ぼくは高校から大学までの学生時代の7年間をマクドナルドで過ごしていました。SWマネージャーとして店舗運営や店舗戦略を担っていたのですが、それがきっかけで今もマーケティング関連の仕事をしています。今回、話題になっている異物混入の件は内部にいたからこそ感じる違和感もありますが、そのあたりはいくつかのブログやWEBの記事で扱われているのでぼくが改めて今回のブログで言及することはありません。また、メディアが過剰だという論述も多く発信されているので、そのあたりを深く言及することもありません。では何を伝えたいかというと「雇用」についてです。予め申し上げますが、ぼくはマクドナルドの味方ではありませんし、擁護するつもりもありません。今回の件も少なからずマクドナルドにも落ち度はあるはずです。ただ、今後起こりうる可能性を考えたときに少し冷静になって、考えや行動を改めた方がいいと感じているだけです。

みなさんは日本マクドナルドがアルバイトを含めて雇用している人数をご存知でしょうか?正確にはフランチャイジーが雇用している部分もありますが、マクドナルドという看板のもとに働いている方は全国で約16万人存在しています。マクドナルドはピープルビジネスと掲げているほど人材への意識が高い企業であり、雇用規模としても日本最大となっております。雇用体制に対しても明確な理念があり、高齢者・障がい者雇用や外国人労働者の受け入れも積極的に行っています。ぼくが在籍していた当時も年配の方や外国人の方がいらっしゃいました。繰り返しになりますが、マクドナルドの人材への関与度は非常に高いものがあると思います。少し古い資料ですが、マクドナルドのCSR Reportの一部です。(2008年なので今は少し違うかもしれません。)活動のすべてを肯定するわけではありませんが、多様な人材を16万人という規模で雇用していることは事実です。

話は変わりますが異物混入事件の後のマクドナルドの売上、どのようになると思いますか?もちろん下がりますよね。今回の件以前から不調が続いていたマクドナルド。2011年をピークに売上は右肩下がりとなっており、昨年の鶏肉問題で大きなダメージを負い、更に追い打ちをかけるように今回の事件が発生しています。売上が激減するのはだれにだって容易に想像がつくことです。もちろん、マクドナルドの経営において多くの課題があったため結果として売上が下がっていると思いますが、今回の件は相当なダメージとなっていると考えられます。右肩下がりとなっている中で対前年比が50%を割る店舗も発生している様子です。つまり、昨年の半分の売上しか取れていないということです。ピーク時から考えるとどれだけ減少しているのでしょうか・・・

売上が半分になっているという事実があれば、何が起こるのかも容易に想像がつくでしょう。しかも、今回の件はブランドイメージそのものに影響を与えています。ブランドイメージを改めて醸成しなおすには中長期的な視点が必要となってきます。つまり、短期的に何かを行ってもすぐに回復するような状態ではないということです。現状の売上も取れない、少し先の売上も見通しがつかない、いつになったら以前の売上水準になるかもわからない・・・そのような状況です。いくら今までの貯蓄があるとはいえ、今まで通りの経営や店舗運営は困難となります。では何が起こるのか?単純に考えましょう。売上が半分になっているのであれば、働く人も半分いれば事足ります。(実際はこのような単純な計算にはなりませんが、それに近しい数字にはなると思います。)つまり、従業員が半分になることが現時点では適正な雇用規模なのです。半分というとあまりピンとこないかもしれませんが、前述のとおりマクドナルドは国内最大の雇用規模です。16万人の半分、【8万人】の雇用が失われる可能性がある状況なのです。

もう少し考えてみましょう。とは言え、アルバイトの方が大半を占めています。むしろほぼアルバイトの方です。非正規雇用であれば再就職も容易ではないか?と考えるのに違和感はありません。学生時代に自分が辞めろと告げられたら次のバイトどうしようかなと考えてすぐにでもアルバイトを募集している企業に電話をかけ、面接の日程を調整することができたでしょう。ただし、そのような都心のマックで働く高校生や大学生をイメージするだけでは不十分です。多様な人材を積極的に雇用しているマクドナルドには様々な方が存在しています。ローカル経済圏で従事している60代の方はどうでしょうか?ハンデキャップを持つ方はどうでしょうか?外国人の方はどうでしょうか?もちろんその中にはアルバイトで生計を立てている人だっているはずです。その方々がすぐに職がみつかるイメージはありますか?ぼくは少なくとも相対的に容易にはみつからないとイメージしています。仕事がなければどのような影響があるかは説明するまでもないですよね。

ぼくは現在ローカルイノベーションというテーマに対して仕事をしています。ローカル経済圏におけるイノベーションを促進するプラットフォームを構築したり、自身もプレイヤーとして事業を行っていくというものです。そのため、いわゆる地方(非都市部のローカルエリア)に伺い現地の課題を聞くことが多いですが、よく話に挙がるのが「仕事がない/限られている」ということです。そのため、若年層が都市部に仕事を求めて流出してしまい、ローカル経済圏ではイノベーションが比較的起きにくくなり、不健全な経済圏となってしまいます。地方創生などはいま旬ですが、雇用を創出しようとみんなで頑張っています。

その一方で今回の異物混入事件ですが、やはりメディアのやり過ぎや我々生活者/消費者の情報発信のやり過ぎ(過剰に叩いているという意味です。)、また異物購入の一部の偽装などにより、マクドナルドが犯した過失以上の負のイメージが醸成されていると言っても過言ではないと思います。つまり、我々がマクドナルドの売上の一部を下げる活動を行っているということになります。(購入をしないという意味ではなく、必要以上に叩いている結果としての売上減少です。)ここまでの話とリンクさせて言い換えると、それは我々生活者/消費者の言動によって一部の雇用を喪失させていることになります。

冒頭にも述べましたが、ぼくはマクドナルドを擁護しているわけではありません。ただ、実態として雇用が失われる可能性はあります。それもかなりの規模で。しかも、我々生活者の力で。一方でローカル経済圏では雇用を創出しようとしている働きもあります。この矛盾?みたいなものに違和を感じました。ITの進化によって我々生活者は個人レベルで発信できる力が与えられました。その影響力は企業が数億円を投資して行うプロモーションを凌駕する場合もあります。その力は一歩間違えれば、人の雇用をなくすことだってできてしまうのです。仮に冗談半分でマクドナルドを叩いているのであれば、その結果によって8万人の方の雇用が失われる可能性があるということは認識しておいた方がいいと思います。

地域の雇用を生み出すということを考えている一方で、生活者の発信によって雇用が失われる可能性があることに気づいたので、自身への備忘録を含めてブログという形で感じたことを残しておきたいと思い綴ってみました。